患者様の症例今までの症例を分類し、解説しています。
case.001 |
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主訴:腹痛、下痢 |
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症状 |
うつ症状[神経系疾患] |
パーソナルデータ |
大阪市在住/女性/壮年期(31~44歳) |
現病歴 |
3年前に結婚。 近くに住むご主人の母(姑)との人間関係で心理的ストレスあり。 1年前パートの面接時、突然手が震えだす。 (同じ姿勢を保たねばならない時や緊張を強いられた時に増悪)その頃より不眠(特に入眠障害)が徐々に強くなる。 ご主人のすすめで近くの心療内科を受診し、催眠導入剤、抗不安薬、抗うつ剤を処方されるも、服用すると余計にしんどくなる。 心療内科を転々とし薬物依存が増幅。 それに加えて倦怠感、抑うつ気分で家事がほとんどできない状態。 そんな時パニック障害が当院にて治ったという友達に勧められ来院された。
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その他の問診事項 |
以前は過食状態だったがここ数か月は食欲不振でほとんど食べない。 元々味付けは濃いのが好き(中華料理など)。 辛味を好む。 大便は3~4日に1行、軟便~下痢。 小便は1日に5~6回、濃黄。
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突起すべき体表観察 |
舌診:絳紅、白膩粘苔
脈診:1息4至。滑・弱、按じて有力。右関上枯脈
原穴診:右合谷(実)、右太衝(圧痛)、右衝陽(実)
背候診:左心兪~左肝兪、左脾兪(虚中の実)
腹診:心下、右脾募、右肝相火 緊張
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診断と治療方針 |
肝鬱気滞、気鬱化火内風、肝脾不和
結婚後からの心理的ストレスにより肝鬱気滞からさらに気鬱化火内風が起こり、ふるえ症状発現。 薬物服用による副作用も身体に悪影響を及ぼしたものと思われる。
治療は、理気疏肝を中心に、安心をはかる。
1診目~4診目:百会
5診目~10診目:合谷
11診目~13診目:太衝
14診目~ :申脈
週2~3回のペースにて来院
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治療経過 |
不眠(入眠障害)は1回目の治療で完全に改善された。7診目あたりから徐々に家事もできるようになり、気分もスッキリしてきた…との事。その頃より表情が豊かになり、笑顔が出るようになった。現在は薬の服用は一切無し。 |
考察 |
心療内科での薬が本人曰く「全く効かないどころか余計にしんどくなる…」…こういった訴えはこの方だけでなく実際によく訴えられます。これらの疾患は鍼灸の得意とするところです。なぜなら東洋医学は病の原因を「心と身体の両面から探っていくからです。この症例は私がよく患者さんに云っている「『精神安定剤』は『精神固定剤』なんだ。」という事をよく表しています。喜怒哀楽あっての人生。途中からお見せになられる笑顔がとても自然で素敵です。皆様に表情の変化がお見せできずに残念です。心理的なカウンセリングなど無くても、身体のバランスを整えさえすれば精神も安定するのです。 |
case.002 |
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主訴:抑うつ、倦怠感、不眠 |
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症状 |
過敏性腸症候群[消化器系疾患] |
パーソナルデータ |
大阪市在住/男性/壮年期(31~44歳) |
現病歴 |
2013年9月、小売店(衣料品店)をオープン。当初は開店、経営の不安などの心理的ストレスから食欲が低下するも、食べると普通に食べることができた。睡眠障害なし。
同年12月、商品仕入れのため卸売店に行った際、急に気分が悪くなり、腹痛と胸やけが強く3回トイレで嘔吐。
その後空腹時痛が徐々に強くなり何か食べると寛解する。
今年1月より腹痛を伴う下痢が起こり、初診時までほぼ毎日続いている。
近くの消化器内科で「過敏性腸症候群」との診断で投薬を受けるが、服薬しても納まらず全く改善しないので現在一切服薬していないとの事。
このままでは仕事に差し支えるとの事で、当院に通院する知り合いの勧めで来院。
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その他の問診事項 |
仕入れ時、店内イベントなどで悪化。
大便は1日に4~5行(ひどいときは10行近いときがある)、腹痛を伴う下痢。残便感有。
小便は1日に4~5回、淡黄色。
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突起すべき体表観察 |
舌診:紅舌、白膩苔。舌尖紅刺多い。舌裏も紅、舌下静脈の怒張強い。
脈診:1息3至半、滑枯弱。特に右関上に枯滑。
原穴診:右太白(虚)、左太渓(虚)、左右太衝(実)、左合谷(実)
背候診:神道・筋縮(圧痛)、右心兪(虚)、左肝兪~左胃兪(実)、左心兪(実)
腹診:左脾募、左肝相火。臍周冷え。左少腹急結。 |
診断と治療方針 |
肝脾不和(肝鬱気滞中心)
治療は、疏肝理気を中心に行う。 1診目~3診目:百会 4診目~7診目:太衝 8診目~11診目:肝兪 12診目~:内関
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治療経過 |
3診目より腹痛が全くなくなり、数ヶ月ぶりに普通便がスッキリと出たと、大喜びされる。
5診目より腹痛、下痢が急激に治まり、便も普通便が出ることが多く、心身ともに安定してきました。 |
考察 |
過敏性腸症候群は難病の範疇に入りますが、非常に多くの方が当院にお見えになられます。
精神的な要素が大きく、繰り返すのが特徴です。 ストレス過多、またそれによる過食(特に油物や甘いもの)、運動不足などは症状を悪化させます。
無理をせず養生し、継続して鍼灸治療を受けることで再発することはなくなります。あきらめないで下さい。 |
case.003 |
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主訴:肩こり、のぼせ、動悸、倦怠感、足の冷え |
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症状 |
更年期障害[産婦人科疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/女性/中年期(45~64歳) |
現病歴 |
今年1月より生理が極端に少量になり、2か月間隔になった。5月は全くなかった。
2月頃よりホットフラッシュ(冷えのぼせ)、肩こり、動悸、倦怠感、寝汗などに悩まされるようになった。
春には上記症状に加え、不安感と、夜中に何度も目覚めるようになり、疲労感が取れない。
当院に通院中の知人に勧められて来院。 |
その他の問診事項 |
肩こりは何者かにのしかかられているような感じ。
腰がだるくなり易い
最近、髪の毛が細くなり白髪が増えた |
突起すべき体表観察 |
舌診:淡紅~紅 舌尖紅刺多い
脈診:1息4至 滑弦 右関上に枯脈 脈力有り
原穴診:左合谷(虚中の実)、左神門(虚)、左太白(虚)、左臨泣(実)、右照海(虚)
背候診:神道(圧痛)、右肺兪~脾兪(虚中の実)、左心兪(虚中の実)
腹診:左肝相火(実)、左太巨(虚) |
診断と治療方針 |
心腎不交
現代医学的には、更年期障害は、自律神経障害(特に血管運動神経障害)、精神障害、身体・代謝障害に大別される。
東洋医学では、「心」と「腎」及び「肝」のバランスの乱れを原因とする。
この症例では腎陰不足から相対的に陽気の強い心陽が昂ぶり、不眠や不安感が起こったものと考えられる。
1診目~3診目:後渓
4診目~7診目:心兪
8診目~ :照海 |
治療経過 |
週2回来院
1診目で眠れるようになり、鍼の効果に感動されていた。
3診目より不安感和らぐ
5診目以降、動悸が最近していないのに気付く
7診目以降、ほぼ全ての不定愁訴寛解 |
考察 |
東洋医学では、いわゆる老化現象(腰痛、白髪、歯や骨がもろくなる、頻尿、物忘れなど)は「腎の弱り」と考えます。
いわゆる更年期は、その老化の始まりであり、体調の変化が大きく表れる時期です。身体の下方(腎)が弱ることにより、上方(心や肝)が昂ぶり、身体の上部の症状(五十肩、耳鳴り、ホットフラッシュ、めまいなど)が起こり易くなります。
したがって、身体のバランスの乱れを鍼灸によって整えることで、自然治癒力が大きく働きだします。
一本の鍼で身体のバランスを調整することがいかに効果のある事か、実感して頂けたことと思います。 |
case.010 |
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主訴:胃痛 |
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症状 |
胃痛 [消化器系疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/男性/中年期(45~64歳) |
現病歴 |
若い頃から食が細く、脂っこい物・アイスクリームなどを少し多く食べると腹痛、下痢を起こしていた。
数週間前より職場の同僚達との飲み会が続き、やや暴飲暴食気味だった。
3日前から心下部、上腹部に強い痛みとひきつり感を発症。下痢しだした。
2日前に消化器内科を受診し内服薬を貰うが、痛み一向に治まらず来院。 |
その他の問診事項 |
心下~上腹部にかけて張悶痛が強く、ガスが溜まった感じ。擦ると楽になる。
食欲はないが食べようと思えば食べられる。全身がだるい。甘いもの好き。
43歳時、ピロリ菌除去
大便は1日に1~2行、軟便 |
突起すべき体表観察 |
舌診:淡紅、白膩苔、歯痕有、湿潤、舌尖やや紅
脈診:1息3至半、濇脈、左寸・関に枯弦
原穴診:左合谷(虚中の実)、左太白(虚)、左太衝(虚中の実)
背候診:神道・筋縮(圧痛)、右脾兪~右三焦兪(虚)
腹診:心下、両脾募、左肝相火 |
診断と治療方針 |
湿困脾土、肝鬱気滞
胃は五臓六腑の大源であり、水穀の受納と腐熟を主る。
今回の場合、素因として脾陽不振のある所に暴飲暴食・労倦・七情の過不足が重なり、胃が受納と腐熟の機能を損ない、胃の和降の作用が失調して疼痛が起こったものと考えられる。
1診目~3診目:足三里
4診目~6診目:内関 |
治療経過 |
当院に通院しだして薬は服用していない。
1診目後、胃痛・ひきつり感、軽減する。
3診目で、ほぼ胃痛消失。ややつっぱり感残る。
4診目には、胃痛・つっぱり感消失。 |
考察 |
最近、社会・経済不安、失業、受験競争など七情の過不足による肝の昂ぶりによって脾胃を損ねてしまい胃の不調を発症されている方が多く来院されます。
今回の症例のように、元来胃が弱い方がストレスにさらされると、てきめんに弱いところに症状が出ます。
東洋医学では、胃の気(=脾胃の働き)を増強させることが治療の根本と考えます。
また、東洋医学は「未病治」が特色です。
継続して鍼灸治療を受けることで胃の気が充実し、再発することはなくなります。
さらに一層お元気で、毎日愉快に過ごされます事を願っています。 |