患者様の症例今までの症例を分類し、解説しています。
case.014 |
+この情報を詳しく見る |
主訴:腰痛・胃のもたれ |
|
症状 |
腰痛・胃のもたれ [神経系疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/男性/中年期(45~64歳) |
現病歴 |
〈腰痛〉40歳頃より年数回の頻度で腰痛出現。今までは特に何も治療しなくても半月程度で寛解していた。
この春に所属部署の統廃合で重要なポストに就き、その頃より腰痛再燃する。2週間前に整形外科を受診し若干の変形を指摘され、鎮痛剤と湿布を処方されるが、1か月以上たっても治る気配がない。
〈胃のもたれ〉もともと若い頃から胃が弱く、精神的ストレスで過食(脂っこい物、甘い物、おかきなど)する。特に春先が多い。
50歳時、胃部の刺痛が強く消化器内科受診。『胃潰瘍』と診断され西洋薬にて約2週間で改善。
1か月前から常に胃がもたれ、シクシク痛むことがある。 |
その他の問診事項 |
肩こり。ひどくなると頭痛。
口が粘る 口渇あり 脂っこいもの、甘い物を好む
大便:2日に1行 やや硬め 臭い強い スッキリ出ない |
突起すべき体表観察 |
舌診:紅 黄膩苔 舌辺無苔 舌尖紅
脈診:1息3至半 弦
原穴診:右太衝(熱)
背候診:右肝兪、右脾兪~左胃兪(実)
腹診:心下 両脾募 右肝相火 |
診断と治療方針 |
肝鬱気滞、肝脾不和
イライラしたり精神的緊張やジレンマ・抑鬱感などによって肝気が鬱滞し、その肝鬱が胃腸の機能を失調させたものと考えられる。
またその胃腸の機能は中医学では胸腰椎移行部の経穴の脾兪・胃兪に異常所見を生じることもあるとされている。脾は肌肉を主ることから、脾の機能異常は肌肉を疲れやすくさせる。そのため腰部におけるだるさを生じたものと推察される。
1診目~7診目:太衝
8診目~12診目:公孫
13診目~18診目:太白 |
治療経過 |
3診目頃より、前屈時の腰部のだるさ軽減。胃もたれは治療後ガスが出て楽になった。
8診目頃より、前屈時の腰部のだるさ消失。胃もシクシク痛むことがなくなった。便もスッキリ出る。
10診目頃より、腰は長時間座位をとった時以外はだるくならない。胃の違和感もほぼ消失。
13診目頃より、便もスッキリと毎日出る。ガスの臭いも消失。
現在も、体調を整えるべく通院中。 |
考察 |
開業鍼灸師レベルで比較的来院頻度の高い腰痛。その腰痛を訴え来院された患者さんに対し、現代医学的・中医学的に詳細な問診・体表観察を行い、精神的ストレスに影響される胃腸症状及び腰痛に対するアプローチが功を奏した症例です。
鍼灸治療は局所のみでなく身体全体を診ることで、根本原因のみならず、この先どうなっていくかが予見でき、またその悪化を防止できる優れた治療法なのです。
これからも鍼灸の力で、身体の方から心の緊張を緩めていって頂けたらと切に願っています。 |