患者様の症例今までの症例を分類し、解説しています。
--「整形外科」の症例一覧を表示しています--
整形外科
case.004 |
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主訴:膝痛 |
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症状 |
膝痛 [運動器系疾患] |
パーソナルデータ |
大阪市在住/女性/中年期(45~64歳) |
現病歴 |
5年前、ダンス教室で社交ダンスをしていた時に急に膝内側痛が起こり、腫れて屈伸不能となった。以降、寛解増悪を繰り返し、悪化すると整形外科で水を抜き、ヒアルロン酸の注射とロキソニン或いはボルタレンを処方されていた。数日は楽だが、数か月単位でみると確実に悪化してきている。
途中、鍼治療(局所鍼や経絡治療)も受けたが、余計に痛くなりやめた。
数週間前より骨がキリキリと疼くような痛みで歩行困難となる。
娘の友人(アトピー性皮膚炎が当院にて治癒)から当院のことを伝え聞いて来院。 |
その他の問診事項 |
動作開始時痛(starting pain)有
運動しだしたら体も心もスッキリする
雨天に悪化
冷やすと痛みは軽減する |
突起すべき体表観察 |
舌診:紅 黄膩
脈診:滑数 脈力有
原穴診:左後渓(実)、右太衝(実)
背候診:右心兪(虚中の実)、左肝兪~胃兪(虚中の実)、脊柱(圧痛)
腹診:心下、胃土、右肝相火 |
診断と治療方針 |
風熱の邪に湿邪が絡んで、経絡や関節に阻滞し、そのため気血の流れが阻滞すると、このタイプの痹証が発症する。
1診目~5診目:後渓
6診目~10診目:太都
11診目~ :足三里 |
治療経過 |
初診時は小型のスーツケースを杖代わりにやっとの思いで来院されました。駅の階段を降りるのが一歩一歩大変だったそうです。
1診目で疼く痛みはほゞ消失。熱感も大幅に改善された。
2診目以降、疼痛、腫れ、熱感も回を追うごとに改善し、ご本人も鍼の力に大変驚かれ、「まるで狐につままれたみたいです!」と来院するのを楽しみにしておられました。 |
考察 |
膝に水が溜まるのは、膝の炎症を冷まそうとする身体の治癒力の働きです。溜まった水を取り除くのではなく、溜まる原因を取り除かなければ治りません。西洋医学にはその発想がないように思います。
この症例の場合、甘いものを控え、筋力を鍛える事が膝の養生としては一番大事です。安静にするのではなく使いながら治す事、大切です。
本当の鍼の素晴らしさをわかって頂けて本当に良かったです。
これからも益々充実したダンスライフを楽しんで頂きたいと心より願っています。 |
case.014 |
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主訴:腰痛・胃のもたれ |
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症状 |
腰痛・胃のもたれ [神経系疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/男性/中年期(45~64歳) |
現病歴 |
〈腰痛〉40歳頃より年数回の頻度で腰痛出現。今までは特に何も治療しなくても半月程度で寛解していた。
この春に所属部署の統廃合で重要なポストに就き、その頃より腰痛再燃する。2週間前に整形外科を受診し若干の変形を指摘され、鎮痛剤と湿布を処方されるが、1か月以上たっても治る気配がない。
〈胃のもたれ〉もともと若い頃から胃が弱く、精神的ストレスで過食(脂っこい物、甘い物、おかきなど)する。特に春先が多い。
50歳時、胃部の刺痛が強く消化器内科受診。『胃潰瘍』と診断され西洋薬にて約2週間で改善。
1か月前から常に胃がもたれ、シクシク痛むことがある。 |
その他の問診事項 |
肩こり。ひどくなると頭痛。
口が粘る 口渇あり 脂っこいもの、甘い物を好む
大便:2日に1行 やや硬め 臭い強い スッキリ出ない |
突起すべき体表観察 |
舌診:紅 黄膩苔 舌辺無苔 舌尖紅
脈診:1息3至半 弦
原穴診:右太衝(熱)
背候診:右肝兪、右脾兪~左胃兪(実)
腹診:心下 両脾募 右肝相火 |
診断と治療方針 |
肝鬱気滞、肝脾不和
イライラしたり精神的緊張やジレンマ・抑鬱感などによって肝気が鬱滞し、その肝鬱が胃腸の機能を失調させたものと考えられる。
またその胃腸の機能は中医学では胸腰椎移行部の経穴の脾兪・胃兪に異常所見を生じることもあるとされている。脾は肌肉を主ることから、脾の機能異常は肌肉を疲れやすくさせる。そのため腰部におけるだるさを生じたものと推察される。
1診目~7診目:太衝
8診目~12診目:公孫
13診目~18診目:太白 |
治療経過 |
3診目頃より、前屈時の腰部のだるさ軽減。胃もたれは治療後ガスが出て楽になった。
8診目頃より、前屈時の腰部のだるさ消失。胃もシクシク痛むことがなくなった。便もスッキリ出る。
10診目頃より、腰は長時間座位をとった時以外はだるくならない。胃の違和感もほぼ消失。
13診目頃より、便もスッキリと毎日出る。ガスの臭いも消失。
現在も、体調を整えるべく通院中。 |
考察 |
開業鍼灸師レベルで比較的来院頻度の高い腰痛。その腰痛を訴え来院された患者さんに対し、現代医学的・中医学的に詳細な問診・体表観察を行い、精神的ストレスに影響される胃腸症状及び腰痛に対するアプローチが功を奏した症例です。
鍼灸治療は局所のみでなく身体全体を診ることで、根本原因のみならず、この先どうなっていくかが予見でき、またその悪化を防止できる優れた治療法なのです。
これからも鍼灸の力で、身体の方から心の緊張を緩めていって頂けたらと切に願っています。 |
case.019 |
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主訴:ぎっくり腰 |
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症状 |
ぎっくり腰 [運動器系疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/男性/中年期(45~64歳) |
現病歴 |
20歳代の時からゴルフを始めて、たまに腰痛を起こしていた。
2週間前から出張が続いて新幹線に乗ることが多くなり、腰がダル重かった。
昨日、会社に行くために玄関で靴を履こうとして屈んだ瞬間に右臀部に激痛が走り動けなくなった。
昨日は会社を休んでじっと安静にしていた。
今日になって少し動けるようになり、当院に通院中の奥様に強く薦められ連れてこられる。 |
その他の問診事項 |
[腰痛]:じっとしていてもズキーンと痛む。腰部屈伸不能で靴下が自分で穿けない。夕方から夜にかけて痛みが強い。
[その他]:パソコンで目が疲れる。足が冷える。出張が重なり身体がしんどい。口苦。 |
突起すべき体表観察 |
舌診:暗紅 薄白苔、 湿潤 左舌辺無苔
脈診:1息4至 滑枯弦
原穴診:左神門(虚)、右衝陽(虚)、右太白(虚)
背候診:筋縮(圧痛)、中枢(圧痛)、十七椎下(圧痛)、右肝兪1行(圧痛)、右三焦兪(虚中の実)
腹診:両脾募 左肝相火 |
診断と治療方針 |
足の少陽胆経経絡経筋の不通
1診目~5診目:臨泣 |
治療経過 |
初診時の治療直後より、ベッドの上での寝返りが楽になり大いに喜ばれる。
2診目、初診時の痛みを10とすると、3程度まで軽減した。
3診目、椅子からの立ち上がり時の痛みもほとんど消失。
5診目、靴下も楽に穿けるようになり完治。 |
考察 |
ぎっくり腰のことを中医学では、卒腰痛または閃挫腰痛といい、経気の気滞血瘀と考えます。
『内経』以降の後世には、『諸病源候論』などの多くの書籍で「卒腰痛(急性腰痛)」と「久腰痛(慢性腰痛)」に分類しています。
また、『景岳全書』の「腰痛論治」では腰痛、卒腰痛に関して、「腰は腎の府、……しかもまた、衝脈、任脈、督脈、帯脈の会するところでもある。」としており、次のように分類しています。
1)「衝脈腰痛」:腰下が横木のように硬くなり、煩熱、遺溺などが起こる。
2)「任脈腰痛」:腰痛とともに汗が出つづける。
3)「督脈腰痛」:腰痛のために左右に身体を反転させることができない。
4)「任脈腰痛」:腰痛のために仰向けやうつ伏せの状態でいられない。
来院時は奥様に肩を貸してもらいながら、本当に辛そうでしたが、帰りには一人で立ち上がって歩行できるようになり、鍼が初めてのご主人は「痛いところに鍼をしないのに何故こんなによくなるのですか?!」とその効果に大変驚かれていました。「痛いところにしないからこそ効くのです」とお答えしましたが、実際痛いところに鍼を刺されて余計に悪くなったという事をよくお聞きします。
「病の根本から治す」本当の鍼の効果を実感して頂け良かったです。ご縁に感謝です! |