患者様の症例今までの症例を分類し、解説しています。
--「耳鼻咽喉科」の症例一覧を表示しています--
耳鼻咽喉科
case.013 |
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主訴:突発性難聴 |
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症状 |
突発性難聴 [耳鼻咽喉科疾患] |
パーソナルデータ |
大阪市在住/女性/壮年期(31~44歳) |
現病歴 |
5年前に結婚。ご主人の仕事の関係で不規則な生活を余儀なくされる。また、近くに住む姑の事でイライラすることも多くなる。
20日前より突然左耳にザーザーと大きな音がし、聴力が減退する。
次の日に耳鼻科受診。突発性難聴と診断され、ステロイド点滴と内服薬を処方されるがほとんど症状不変。
1日中大きな耳鳴音が聴こえ、人とのコミュニケーションも障害され、精神的にも参ってきた。
担当の耳鼻咽喉科の医師がたまたま当院の患者であった為、すすめられて来院。 |
その他の問診事項 |
発症する前日、かなり激昂することがあった。
口苦、口渇あり 目が充血しやすい 顔面紅潮 頭部のふらつき
便が固い 尿濃い
増悪因子:1日中耳鳴りはするが、自宅では特に大きく感じる
寛解因子:気分的にリラックスした時 |
突起すべき体表観察 |
舌診:紅 薄黄苔、舌尖紅、乾燥
脈診:弦数 脈力有
原穴診:左太衝(熱)
背候診:筋縮(圧痛)、中枢(圧痛)、左肝兪~左胆兪(実)
腹診:臍周、左肝相火 |
診断と治療方針 |
肝火
もともと気鬱から化火しやすい状態に加えて、激怒することで肝が傷つき、肝胆の気が経に随って上逆し、精道を犯したために発症したものと考えられる。実証である。
1診目~3診目:百会
4診目~7診目:行間
8診目~10診目:後渓 |
治療経過 |
初診受診後の夜は、朝まで久しぶりにぐっすり眠れたとの事。
3診目受診時、耳鳴りの程度が10→3程度まで改善し驚喜される。
7診目の前日、耳鼻科で検査。低音域は正常、高音域も半分近くまで回復しており、担当医も大変驚いていたと、嬉しそうに報告される。
10診目頃より、日常生活にほゞ支障なくなる。それと共に、目の充血や肩こりなどの不定愁訴も改善。
現在も、体調を整えるべく通院中。 |
考察 |
難聴には、伝音性難聴と感音性難聴がある。
『奇効良方』には「内より聴くこと能わざるものが主である、また外より入ること能わざるものあり」とある。前者は感音性難聴を指しており、後者は伝音性難聴を指したものである。
中医学(=中国伝統医学)上で習慣的に述べられている難聴(耳聾)は、感音性難聴に限定したものであり、伝音性難聴は見落とされている。
鍼灸は耳鳴り、難聴に対しては非常に優れた治療効果を持ちます。奏効の速さと効果は、中薬や西洋薬を服用するよりずっと優れていると考えられます。
今回はその鍼灸の効果の素晴らしさを患者として体感されているドクターが、発症後まだ日の浅いうちに鍼灸治療を勧めて下さった事が、このような早期の治癒につながりました。
ドクターの方々がもっと鍼灸治療の効果に興味を持ってくださり、適応と考えられる疾患については鍼灸治療をご紹介くださる……そんな医療体系が少しずつでも広まれば最高なのですが……。
本当の鍼の素晴らしさをわかって頂けて本当に良かったです。
これからも身体から心に、そして魂にもアプローチする鍼の妙味を体感して頂きたいと心より願っています。 |
case.015 |
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主訴:耳鳴 |
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症状 |
耳鳴 [耳鼻咽喉科疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/女性/壮年期(31~44歳) |
現病歴 |
8年前長女出産後、自律神経失調症・過換気症候群などを発症。
同居のご主人の両親に対して緊張することが多く、ストレスを感じていた。
2か月前左耳に低音の耳鳴り発症。精神的にも不安定になり腹部が張って苦しい状態となる。
友人の紹介で来院。 |
その他の問診事項 |
肩こり、身体がだるい、手足が冷える、痰が絡む、目が疲れる
精神的ストレスで食欲減退する、睡眠不足で朝がスッキリ起きられない、多夢
大便:普段は軟便でスッキリ出ない、時々便秘する。
生理:生理痛は初日だけ下腹部が痛む、腰・腹部が張って痛む、生理中は大便がゆるむ |
突起すべき体表観察 |
舌診:暗紅 白滑苔、舌尖紅
脈診:1息3至半 緩滑枯
原穴診:左太衝、左丘墟(虚中の実)。左神門、左太白、左太渓(虚)
背候診:神堂、霊台(圧痛)、左肝兪~左胆兪(実)、左脾兪(虚)、左胃兪(虚中の実)
腹診:右脾募、右肝相火 |
診断と治療方針 |
肝鬱気滞、湿痰
自分の感情をコントロールし難い素因に加えて家庭内での精神的ストレスが誘因となり、七情の過不足を生じ、肝鬱気滞となったものと考えられる。
また、中医学の耳鳴の弁証分型に従えば『痰火』型に近いものと考えられる。
1診目~3診目:合谷
4診目~10診目:豊隆 |
治療経過 |
初診受診後、手足が温かくなり食欲が出てきた。
3診目で、耳鳴りの程度が10→5程度に減少。腹部の張って苦しい感じも大幅に楽になる。
7診目頃より痰が絡まなくなり、便もスッキリ出るようになる。
10診目で耳鳴及びその他の不定愁訴ほぼ寛解する。
現在も、体調維持のために通院中。 |
考察 |
肝鬱気滞から気鬱化火がひどくなれば痰火型に移行するものと予想される。ゆえに精神的ストレスを溜め込まない様にすることは勿論であるが、脂っこい物や香辛料などの摂取を控えるようにしなければならない。
様々なストレスにさらされても、うまくかわせる人とかわせない人がいます。
この方は、吉田兼好の「物言わぬは腹ふくるるわざ」のタイプ(=沈思黙考型)で、ストレスを内に溜め込んでしまい、気の流れが停滞しがちです。
食養生も指示をしっかりと守られ、散歩をされるなど「必ず治すんだ!」と強い意志を持って治療に取り組まれた事も早期の治癒に結びつきました。
鍼で体調を整えれば、少々のストレスに負けないようになり、身体にまで影響が及ぶことはなくなるというのが、鍼の素晴らしいところだと思います。 |
case.016 |
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主訴:喉の閉塞感、慢性の咳 |
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症状 |
梅核気、咳 [耳鼻咽喉科疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/女性/壮年期(31~44歳) |
現病歴 |
半年前より咳がよく出るようになり、それがずっと続いている。(就寝時に仰臥位になると咳き込む。人との話し合いで一生懸命話し出すと咳き込む。)
2か月前より喉に塊があるような違和感を覚え、詰まったようになる。
耳鼻咽喉科のクリニックを受診し、内視鏡等の検査を受けるも異常なし。半夏厚朴湯を処方されるが症状不変。
その後、口中に唾液がわく感じがして、意識して飲み込まないとどんどん溜まり込むようになる。
ますます喉の閉塞感が強くなり、病院の耳鼻咽喉科で検査をするが異常なし。心療内科に回され抗不安薬を2週間服用するも効果なし。
友人の紹介にて来院。 |
その他の問診事項 |
心下部の痞え、胸脇苦満がある。常に肩に力が入っている感じ(就寝中も)
目の充血、目が疲れる。 |
突起すべき体表観察 |
舌診:暗紅で色あせ、 白苔、舌尖に紅刺多い
脈診:1息4至 弦脈 脈有力
原穴診:左神門(虚)、左太渓(虚)、左太衝(実)、左衝陽(実)
背候診:神道(圧痛)、左心兪(虚中の実)
腹診:両脾募、左肝相火 |
診断と治療方針 |
肝鬱気滞
咽喉部に異物が詰まっているような感じがあり、喀出しようとしても飲み込もうとしてもとれないが飲食物の通過には支障がないといった症状を主症とする病症を「梅核気」といいます。 この症例の梅核気は、肝の疏泄機能の失調により起こり、気機が鬱滞し津液を運ぶことが出来ずに痰を生じ、その痰と肝気が合流して経に沿って上行し、胸膈から上を塞ぎ、咽喉部に結すると心下部の痞え、胸が苦しくなる症状などと同時に「梅核気」が起こったものと考えられる。
また肝鬱により気機が失調し、上逆して肺を犯すと肺の宣降機能に障害が現れて気逆の咳が起こる。(肝気犯肺)
1診目~5診目:百会
6診目~10診目:後渓
11診目~15診目:内関
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治療経過 |
初診時、置鍼中にぐっすり眠ってしまわれ、身体が大変軽くなった様とのこと。
3診目頃より、梅核気軽減(10→5)。唾も溜まらなくなった。
8診目頃より、梅核気の症状ほとんど消失。咳も10→3と軽減。
12診目頃より、咳もほぼ消失。
現在も、体調維持のため通院中。 |
考察 |
梅核気は臨床的によく遭遇する疾患です。耳鼻科で検査をしても全く異常が見つからないので途方に暮れてしまわれる方が多いようです。
痰気が長期にわたって咽喉部に鬱滞していると、それが熱化して気陰や血分を損傷し、新たな病気を引き起こす原因となります。
女性の更年期に起こり易いことからみても、その時期に身体のバランスを整える事の大切さをお分かり頂けたかと思います。 |
case.018 |
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主訴:鼻づまり |
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症状 |
慢性副鼻腔炎 [耳鼻咽喉科疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/男性/少年期(6~14歳) |
現病歴 |
7歳の時に風邪から気管支炎になり耳鼻科を受診。慢性副鼻腔炎との診断で投薬を受けるが、症状に全く改善が見られず。
数か月前より次第に鼻づまりが強くなり、現在もまだ続いている。
鼻の奥で詰まっている感じで、鼻をかんでも鼻水は出ない。吸い込むとズルズル音がする。
夜も芯から眠れていない様子なので、母親が当院に通院中の友人から薦められ連れてこられる。 |
その他の問診事項 |
鼻水は黄~黄緑の粘液で臭いはない。鼻づまり
肉類、脂っこい物が好き、甘い物が好き、冷飲を好む鼻づまり
増悪要因:学校行事で疲れる、飲食不摂で悪化 |
突起すべき体表観察 |
舌診:淡白 白膩苔、 舌尖紅刺
脈診:1息3至半 滑弱枯 やや細
原穴診:左太白(虚)
背候診:霊台(圧痛)、右肝兪~右脾兪(虚中の実)
腹診:両脾募 臍周 肝相火 |
診断と治療方針 |
脾虚湿盛
素体として脾が弱い上に飲食不摂が加わり、さらに脾を弱らせ湿痰・湿熱を生じた。そして脾が弱ることで相対的に肝が盛んとなり、湿痰・湿熱は肝気上逆の影響を受け脾と表裏関係にある足陽明経脈を伝わり、鼻閉を起こしたものと考えられる。
1診目~5診目:太白
6診目~10診目:公孫 |
治療経過 |
2診目の治療で、鼻閉が楽になる。
5診目にて、鼻閉ほぼ消失。
7診目にて、朝がスッキリ起きられるようになりすこぶる元気!……と。(母親談)
現在も、体調維持のため通院中。 |
考察 |
鼻閉は、鼻に開窮している肺の水道通調機能の失調によるものが多くみられる。しかしながらそれ以外にも、肺や腎の異常により生じた湿痰が鼻に上昇して鬱滞したものか、肝胆の変動で生じた湿熱が肝気逆によって上焦へ持ち上げられて鼻で鬱滞したものか、鼻自体で気血の鬱滞が長引いて気滞血瘀となり物理的に鼻閉を生じている、などの分類が必要である。
今回の症例では健脾することにより、病的産物である湿痰・湿熱の発生を防ぎ、それに加えて、脾の運化機能が高まりそれらを除去し得た事により鼻閉は消失したのである。
鍼灸の力はいわゆる『体質だから……』といわれる部分にも効果を及ぼします。早期に治癒に至っただけでなく、首筋や頭部の湿疹(これも中医学では湿熱の現れです。)も綺麗になりました。
一本の鍼で種々の疾患が同時に治療できる、病の根本を治す事の大切さを感じて頂けたかと思います。
より一層逞しい青年になって頂けるように、精一杯お手伝いさせて頂きたいと思っています。 |
case.020 |
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主訴:鼻炎 |
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症状 |
鼻炎 [耳鼻咽喉科疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/男性/壮年期(31~44歳) |
現病歴 |
3日前、フルマラソンの大会があり完走した。強い風が吹き寒い日だった。汗をかいたままで帰宅。
次の日、起床時に寒けがあった。昼過ぎより鼻水が出て止まらなくなった。鼻閉もあった。
昨日の昼、会社近くの耳鼻科を受診し、鼻炎との診断で内服薬と点鼻薬を処方されるも、眠くなるばかりで、主訴は不変。
姉(不妊だったが当院の鍼治療で昨年無事女の子出産)の紹介で来院。 |
その他の問診事項 |
・10年ほど前よりアレルギー性鼻炎。毎年、春先~5月半ばまで続く。
・鼻炎症状は鼻水、鼻閉が主で、目痒、目の充血、くしゃみなどは出ない。鼻水は無色透明で希薄、冷えると多く出る。悪寒あり、熱感あり、発汗なし、喉が乾燥する。
・もともとよく風邪をひく、肩こりが強い
・甘いものや脂っこい物が大好きで、外食が多い。ビールをよく飲む。
・仕事上(営業職)気を遣うことが多く、また出張も多いため、精神的にも肉体的にも疲れている。 |
突起すべき体表観察 |
舌診:淡白~淡紅 白膩苔、胖嫩 歯痕あり 舌尖紅刺
脈診:浮脈 按じて滑 左寸口枯脈
原穴診:左合谷(圧痛)
背候診:神道(圧痛)、左肝兪~左胃兪(実)
腹診:心下 両脾募 胃土 左肝相火 |
診断と治療方針 |
太陽表実証
1診目~3診目:合谷 |
治療経過 |
初診時、置鍼中から身体全体が温かくなって気持ちよく眠ってしまわれた。
2診目で、鼻水、鼻閉はほゞ消失。悪寒消失。
3診目で、身体全体スッキリし、完治。 |
考察 |
今回の症例は急性症ではあるが、四診合参の結果、ベースに肝気鬱滞があり、それが影響を及ぼしていることが理解できる。
「合谷」は解表のみならず、肺気の鬱結を瀉す、開鬱、上焦の気分を清す、利気降逆、昇降宣通の作用もあり、それがもともとの肝気鬱滞に対しても好影響を及ぼし、今回のような早期治癒に結びついたものと考えられる。
「営業職なので鼻水ズルズルだと仕事になりません。3日で治してほしい。」と仰っていましたが、ご期待にお答えできて嬉しく思います。
鍼灸治療は風邪などの急性症にも非常に効果があるのですが、まだまだ一般的には広まっていないようで、残念に思います。
『風邪は身体の大掃除』……ではあるのですが、同時に『風邪は万病の元』でもあります。なんといってもひかないのが一番です。風邪を寄せ付けない身体づくりが大切です。鍼灸治療で精一杯お手伝いさせて頂きます。 |