患者様の症例今までの症例を分類し、解説しています。
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産婦人科
case.003 |
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主訴:肩こり、のぼせ、動悸、倦怠感、足の冷え |
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症状 |
更年期障害[産婦人科疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/女性/中年期(45~64歳) |
現病歴 |
今年1月より生理が極端に少量になり、2か月間隔になった。5月は全くなかった。
2月頃よりホットフラッシュ(冷えのぼせ)、肩こり、動悸、倦怠感、寝汗などに悩まされるようになった。
春には上記症状に加え、不安感と、夜中に何度も目覚めるようになり、疲労感が取れない。
当院に通院中の知人に勧められて来院。 |
その他の問診事項 |
肩こりは何者かにのしかかられているような感じ。
腰がだるくなり易い
最近、髪の毛が細くなり白髪が増えた |
突起すべき体表観察 |
舌診:淡紅~紅 舌尖紅刺多い
脈診:1息4至 滑弦 右関上に枯脈 脈力有り
原穴診:左合谷(虚中の実)、左神門(虚)、左太白(虚)、左臨泣(実)、右照海(虚)
背候診:神道(圧痛)、右肺兪~脾兪(虚中の実)、左心兪(虚中の実)
腹診:左肝相火(実)、左太巨(虚) |
診断と治療方針 |
心腎不交
現代医学的には、更年期障害は、自律神経障害(特に血管運動神経障害)、精神障害、身体・代謝障害に大別される。
東洋医学では、「心」と「腎」及び「肝」のバランスの乱れを原因とする。
この症例では腎陰不足から相対的に陽気の強い心陽が昂ぶり、不眠や不安感が起こったものと考えられる。
1診目~3診目:後渓
4診目~7診目:心兪
8診目~ :照海 |
治療経過 |
週2回来院
1診目で眠れるようになり、鍼の効果に感動されていた。
3診目より不安感和らぐ
5診目以降、動悸が最近していないのに気付く
7診目以降、ほぼ全ての不定愁訴寛解 |
考察 |
東洋医学では、いわゆる老化現象(腰痛、白髪、歯や骨がもろくなる、頻尿、物忘れなど)は「腎の弱り」と考えます。
いわゆる更年期は、その老化の始まりであり、体調の変化が大きく表れる時期です。身体の下方(腎)が弱ることにより、上方(心や肝)が昂ぶり、身体の上部の症状(五十肩、耳鳴り、ホットフラッシュ、めまいなど)が起こり易くなります。
したがって、身体のバランスの乱れを鍼灸によって整えることで、自然治癒力が大きく働きだします。
一本の鍼で身体のバランスを調整することがいかに効果のある事か、実感して頂けたことと思います。 |
case.005 |
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主訴:不妊症 |
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症状 |
不妊症症 [産婦人科疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/女性/壮年期(31~44歳) |
現病歴 |
32歳の時に結婚。36歳の時に婦人科を受診し、不妊治療開始。タイミング療法などの指導を受けるが妊娠せず。38歳~41歳に至るまで5回体外受精を受けたが、着床することはなかった。 身体の根本から体質改善する必要があるのでは……と考えていた時に、不妊治療の通院先で知り合った友達(当院にてご夫婦で鍼灸治療を受けられ無事妊娠~出産された)の紹介で来院。 |
その他の問診事項 |
若い頃から肩こりが強い
小便の出が悪い、小便の切れが悪い、たまに尿漏れ有り
最近髪の毛が細くなり白髪が増えた |
突起すべき体表観察 |
舌診:淡紅 舌尖紅
脈診:滑 右尺位弱
原穴診:左太白(虚)、左照海(虚)、右太衝(実)
背候診:右肝兪~右三焦兪(実熱)、神道(圧痛)、左志室(冷) |
診断と治療方針 |
腎虚証、肝鬱気滞~化火、及び周期療法
肝の昂ぶりとともに腎の弱りがみられる
東洋医学では、腎は「先天の精」(生まれ持ったエネルギーの、生殖の精)を蔵すところとされており、「生殖」とも関係が深い。
この症例では、主に上(肝)と下(腎)のバランスの乱れが不妊の原因と考えられる。
1診目~5診目:百会
6診目~13診目:後渓
14診目~20診目:天枢
21診目~22診目:太衝
23診目~30診目:脾兪
31診目~43診目:肝兪 |
治療経過 |
鍼灸治療を開始して半年後の8月に体外受精を受けられ、無事に着床が認められました。
当初、週2~3回のペースで来院され、このように早く結果が出せて良かったです。
初診時に「いろいろな治療(漢方薬や気功、ホメオパシーなど)を受けてきて、鍼灸が最後の頼みです。」とおっしゃっていましたが、できる事なら鍼灸がファーストチョイスになるようこれからも本当の鍼灸の素晴らしさを広めたいと思います。
途中、いろいろな思いがあったでしょうが、信じて通って下さった事に感謝します。
無事、出産に至るまで一生懸命フォローさせて頂きます。 |
考察 |
鍼灸治療を開始して半年後の8月に体外受精を受けられ、無事に着床が認められました。
当初、週2~3回のペースで来院され、このように早く結果が出せて良かったです。
初診時に「いろいろな治療(漢方薬や気功、ホメオパシーなど)を受けてきて、鍼灸が最後の頼みです。」とおっしゃっていましたが、できる事なら鍼灸がファーストチョイスになるようこれからも本当の鍼灸の素晴らしさを広めたいと思います。
途中、いろいろな思いがあったでしょうが、信じて通って下さった事に感謝します。
無事、出産に至るまで一生懸命フォローさせて頂きます。 |
case.008 |
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主訴:不妊症 |
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症状 |
不妊症 [産婦人科疾患] |
パーソナルデータ |
大阪市在住/女性/2014年3月下旬 |
現病歴 |
2009年30歳の時に結婚。32歳の時に婦人科を受診しタイミング療法と排卵誘発剤を用いた不妊治療開始。 33歳時よりAIH(人工授精)開始[5回施行]。 34歳時IVF-ET(体外受精)を行う。 今年1月、IVF-ET3回目も無効。
不妊治療先の病院で知り合った友人(当院にて加療後、無事妊娠出産に至る)から当院のを強く薦められて来院。 |
その他の問診事項 |
男性因子:ご主人、精子量少なくやや奇形傾向
女性因子:右卵管狭窄
飲食:大食 毎日水を2L以上飲む健康法をしている 毎日青汁を飲んでいる
大便:1日2~3行 冷えると下痢し易い
梅雨時期及び雨の日に身体が重だるい
近所に住む姑のことでイライラすることが多い |
突起すべき体表観察 |
舌診:淡紅 白膩苔 湿潤 舌尖紅刺
脈診:1息3至半 弦脈 右尺位有力
原穴診:左太白(虚)、右太衝(虚中の実)、左丘墟(実)、右三陰交(実)
背候診:右肝兪~右三焦兪(虚中の実)
腹診:心下、胃土、肝相火 |
診断と治療方針 |
肝鬱気滞、湿困脾土、及び周期療法
結婚後の環境の変化、長期にわたる不妊治療や姑との事などによるストレスにより肝鬱気滞を生じ、また水分の過剰摂取により湿痰の邪が下焦に阻滞し任衝脈不暢を起こしたものと考えられる。
1診目~5診目:合谷
6診目~10診目:豊隆
11診目~19診目:公孫
20診目~25診目:大巨
26診目~30診目:申脈 |
治療経過 |
10診目までは気の動きを良くし湿痰の除去に努める
11診目以降、理気を中心としつつ衝脈を意識した治療に
20診目以降、腎を意識した配穴に
22診目に来院時の前日に婦人科にて妊娠が確認された |
考察 |
ご結婚後、6年目にして初めての着床~妊娠となり本当におめでとうございます。
鍼治療、やる気満々の奥様と、「体質改善に良いから!」と無理やり引っ張って来られたご主人様。 最初は、しぶしぶ来院しています……という感じのご主人様でしたが、途中から次第に活き活きしてきた表情に変わって来られ、「これはいける!」と直感しました。
母体は勿論、ご主人様も心身ともに健康なら、なお一層丈夫で健やかなお子様に育ちます。
無事、出産に至るまで一生懸命治療させて頂きます。
赤ちゃんのお顔が見られます日を心から楽しみにしてます。 |
case.022 |
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主訴:無月経になって1年余り |
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症状 |
無月経 [産婦人科疾患] |
パーソナルデータ |
明石市在住/女性/壮年期(31~44歳) |
現病歴 |
幼少時より胃腸が弱くよく下痢をしていた。3年前より、食事を少し多く摂取すると腹が張って下痢となる。また少し冷えたものや生もの(刺身など)を食べると胃に冷痛が起こり、食事量が減少し、下痢となる。
月経は次第に減少し、ついには無月経となり、身体は徐々に肥満してきた。無月経となって1年余り経過している。
親戚の叔母さんから当院の事を勧められ来院。 |
その他の問診事項 |
腰がだるい、下腿の浮腫、帯下多い、倦怠無力感 |
突起すべき体表観察 |
舌診:淡白 白膩苔、胖嫩
脈診:細滑
原穴診:右太白(虚)、右衝陽(実)、その他 右豊隆(実)
背候診:右膈兪~右脾兪(実)
腹診:両脾募、胃土 |
診断と治療方針 |
痰湿
素因として脾腎陽虚があり、そのために痰湿が生じ、痰湿が衝任に停滞して血脈の流通を阻害して無月経となったものと判断される。
1診目~5診目:中脘
6診目~12診目:豊隆
13診目~17診目:脾兪
現在も、体調をさらに整えるべく通院中。 |
治療経過 |
5診後に月経が発来したが量が少なく、色はやや薄い様子。
15診後に再び生理になり、今度は量も色もほぼ正常との事。またそれと時期を合わせるように、便も普通便になり全体に身体が軽くなったとの事。 |
考察 |
無月経の事を中医学では「経閉」といい、18歳を超えて月経が発来しないもの(原発性閉経)、あるいは月経が発来したのちに妊娠によらず3カ月以上月経が停止するもの(続発性閉経)を指します。
中医学では、腎気虚型、気血両虚型、気滞血瘀型、痰湿型、などに弁証分型した上で適切な経穴を選択し治療します。
まず、遠方から欠かさずご来院頂いたことにお礼申し上げます。
まだまだこれから女性としての大切な時期を迎えるというのに、1年余りも生理が来なくて大変ご心配だったこととお察しします。
ものは考えようで、だからこそ早めに鍼にご縁を頂いたんだと、いい風に考えることも大切です。
これからの時期、鍼で身体のバランスを整え、もっともっと充実した人生となりますよう、願っています。 |
case.023 |
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主訴:生理痛 |
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症状 |
生理痛 [産婦人科疾患] |
パーソナルデータ |
大阪市在住/女性/壮年期(31~44歳) |
現病歴 |
昨年、会社の配置換えで大阪に転勤、それと同時に中間管理職となり、精神的にも肉体的にもストレスを感じていた。
その頃から、生理前~生理直後の生理痛がひどくなった。下腹部が張ってキリキリと痛み、ひどい時は腰脊部に及ぶ。経血量は一定せず、色は暗紫色でレバー状の塊が多い。胸脇部や乳房の脹痛も強い。
会社の同僚(不妊治療で当院に通院し、無事男の子出産)に当院を強く薦められ来院した。 |
その他の問診事項 |
口苦 目が充血しやすい 生理前になるとイライラして怒りっぽくなる |
突起すべき体表観察 |
舌診:暗紅 白膩苔、舌辺に瘀斑、舌下静脈怒張
脈診:弦
原穴診:左太白(虚)、左照海(虚)、右神門(虚)
背候診:左心兪(実)、右肝兪~右胃兪(実)
腹診:心下、左肝相火 |
診断と治療方針 |
気滞血瘀
本症例は情志抑鬱となり衝任二脈の気血が鬱滞し、気血の流れが阻害されたために、月経前と月経直後に小腹部の脹痛(拒按)が起こって両脇部が痛んだものと判断される。
月経発来の6日前と3日前に2回の鍼治療とする。
1診目~6診目:三陰交
7診目~10診目:合谷 |
治療経過 |
2診後には、下腹部の脹痛と胸脇部の脹痛は初診時の10→5へと大幅に軽減した。
4診後には、下腹部の脹痛と胸脇部の脹痛は初診時の10→2~3へと著しく軽減した。
6診後には、脹痛はほとんど出なくなり、血塊も減少した。
8診後には、脹痛は全くと言っていいほどなくなり、血塊もほとんど出なくなった。
それ以降も、体調維持の為に通院中であるが、生理痛は全く気にならなくなったばかりか、「肌の色つやが良くなったね」とよく人から言われると、大変喜ばれる。 |
考察 |
今回の痛経治療では、月経の発来の6日前と3日前に2回とペースを決め、治療しました。
これは月経周期を28日とし、7という数字を基礎数字とする考え方で、『素問』上古天真論篇を参考にしたものです。7日ごとを1期とし、月経前期、月経期、月経後期、中間期の4段階に分けます。これは当院の不妊治療(周期療法)においても基礎となる考え方です。
痛経治療におけるベストの時期は、月経前期と月経期です。月経後期と中間期は、弁証調治の時期と考えます。前者は実証性、後者は虚証性の痛経に適用します。
『霊枢』衛気行篇では、「謹みて其の時を候えば、病期にすべく、時を失い候に反すれば、百病治せず」と述べています。
痛経、不妊に限らず、婦人科疾患における治療のタイミングは、非常に重要な意義があると考えています。
本症例の(考察)は、かなり難解かも知れませんが、中医臨床を行う鍼灸師、漢方医のプロの方々にぜひ知っておいて頂き、日々の臨床に役立てて欲しいとの思いで、思わず熱が入りました。
痛経に対して鍼灸治療は非常に効果があります。
この症例のように、弁証が正確で、選穴が適切で、かつベストのタイミングで治療すれば、この症例のように、非常に満足のいく効果を得られます。あきらめないでください。 |
case.024 |
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主訴:更年期障害 |
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症状 |
更年期障害 [産婦人科疾患] |
パーソナルデータ |
八尾市在住/女性/中年期(45~64歳) |
現病歴 |
去年より生理が半年に一度になり、量も極めて少量になる。今年に入ってから生理は来ていない。
去年秋ごろより、ホットフラッシュ、動悸、不安感が強くなり、眠りも浅くなって夜中に何度も起きるようになった。
友人のすすめで来院した。 |
その他の問診事項 |
肩凝り、腰がだるい、めまい、気分が落ち着かない |
突起すべき体表観察 |
舌診:紅 無苔、舌尖紅刺
脈診:1息4至半、数細
原穴診:左神門(虚)、左大陵(虚)、左合谷(虚中の実)、左太衝(虚中の実)、右照海(虚)
背候診:神道(圧痛)、右心兪~右脾兪(虚中の実)
腹診:臍周 左肝相火(実)、臍下不仁 |
診断と治療方針 |
心腎不交
心と腎の陰液の不足と陽の相対的な亢盛に起因する証であると判断される。
1診目~5診目:天枢
6診目~10診目:後渓
11診目~16診目:神門 |
治療経過 |
1診目で、夜、ぐっすり眠れるようになる。(初診時、置鍼中にすでに眠ってしまわれた。)
3診目頃より、気分が安定してきて、不安感が消失。
8診目頃より、ホットフラッシュが大幅に改善し、肩こりがしなくなっているのに気付く。
13診目頃より、長年続いていた腰のだるさが、ほとんど気にならなくなる。
現在も、体調を維持する目的で通院中であるが、不定愁訴はほとんどなくなり、メタボも解消、「肌の色つやが良くなって若くなったね」とよく人から言われると、大変喜ばれる。 |
考察 |
『素問』の上古天真論にある通り、女性は約49歳で任脈、衝脈の機能が衰えてきて閉経を迎える。
任脈、衝脈の大本は腎である。腎の弱りは、頻尿、尿漏れなどの尿の問題や、白髪、歯や骨がもろくなる、足腰が弱くなる、腰痛、物忘れ等の、いわゆる老化現象として現れる。腎は封蔵固摂を主るので、腎が弱ると陽を抑制することができなくなり、気が上へ上へと衝き上げやすくなる。つまり、心肝の気が昂ぶり易くなるということである。
臨床的には、腎虚が根本にあって心肝が昂ぶる(肝陽上亢、心腎不交)か、あるいは脾虚を助長させる(脾腎両虚)か、というパターンに分かれることが多いように思います。
更年期は、老化の入り口で体調が大きく変化する時期です。「生老病死」は人間の避けることの出来ない運命ではありますが、そんな時こそ鍼の力で大難を小難に、小難を無難に過ごすことが大切かと思います。 |